2011-01-01から1年間の記事一覧

心に龍をちりばめて

心に龍をちりばめて (新潮文庫)作者: 白石一文出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2010/10/28メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (18件) を見るこの人の本は初めて読んだけど、みんなのレビューでよく美男美女を描く作家さんなのだと知…

マエハラさん

「私なんてこの病院に来てから悪くなってる、頭だって痛いし、どんどん悪くなってるよ。もうこんな病院出て行きたい、出て行ってやる」 今日も同室のおばあちゃん、マエハラさんの愚痴で目が覚める朝である。おはようございます、と声をかけてもおかまいなし…

嗜好品

刑務所にいると食事だけが楽しみだという話を聞いたことがあるが、入院生活も同じである。一日に何度も献立表をチェックし、メニューについての話題で盛り上がる。主食はほとんどが米飯だから、パンや麺類の日はみんな何日も前から楽しみに待つ。 「きっとほ…

リトル・ピープルの時代

リトル・ピープルの時代作者: 宇野常寛出版社/メーカー: 幻冬舎発売日: 2011/07/28メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 362回この商品を含むブログ (86件) を見る仮面ライダーもウルトラマンも勧善懲悪のお決まりの物語なんだと思い込んで見たこともなかっ…

タニザキさん

マリコがまだ入院していたころ、二人きりの時を見計らって 「タニザキさんが全然私の話を聞いてくれなくて自分の話ばかりするのが本当にストレスだった。アベさんが入ってくれてよかったと思ってる」 と言ってきた。その時はよくわからなかったのだが、確か…

外泊

週末は、自宅で過ごすことが出来る。外泊である。外泊っていうなら入院生活のほうが外泊なんだろうと思うが、まあそういう呼び方なのだから仕方がない。 金曜日の10時に一人で病院を出て家に帰る。日曜日は夫が病院まで送ってくれる。何が幸せって外泊中は「…

マリコ

マリコとヨシオカさんは社交的で、4人でいるときもいつも周囲に目を配り、機会を見つけては通りすがりの人に声をかけお喋りをする。看護師さんや清掃員の女の人にも話しかけ、軽口をたたけるくらいの仲になっている。おかげで人見知りの私も顔と名前が一致す…

バランス

入院期間はあと一ヶ月か二ヶ月というところ。まだまだ先は長い。 症状はすっかり収まっているのだからさっさと退院できるだろうと思ったら大間違い、薬の調整が必要なのだ。どうして外来通院で薬の調整ができないのかよくわからないのだが、とにかく主治医は…

病棟の朝

朝6時。 同室の二人のおばあちゃん、タツノさんとマエハラさんの声で目が覚める。 「私なんて足がしびれちゃって、こんなところに入院してたって全然よくならない、全然よくならないんだよ、もう帰る、○○先生に言うわ」 「まあねえ」 「私なんてさ、足がしび…

ひも類厳禁

私の入院している病棟では、ひも類の持ち込みが厳しく制限されている。 想像すればわかるかもしれないが、要するに自殺防止のためである。 ズボンにはベルトをすることができないし、長い浴用タオルは詰め所に預けなくてはならない。そこまではまあ、わから…

最初で最後のラブレター

ラブレターというものをもらったことが、一度だけある。 自動車学校の待合室でのことだ。 その日は仮免の実技の試験の日だった。それまでに3度仮免の試験に落ちていた私は「仮免さえ取れないなんてもう私は人としてダメだ、ダメ人間だ」というどん底の気分…

猫の秘密

猫は眠るとき、小さな身体に一杯の幸せを蓄える。 規則正しく上下するお腹から、ポンプのように世界じゅうに幸せを送り出している。 本当だよ。 だから、もう寝ている猫を起こさないでね。

押したい欲求

「他人に知られたくない欲望を自分が抱いている」ということを、人はいつごろ自覚するのだろうか。 私の場合、その記憶は小学校の低学年の時である。 生まれて初めて路線バスに乗っていた。なぜだかは忘れたが私の親はおらず、友達と、友達の母親と三人であ…

卵の緒

卵の緒 (新潮文庫)瀬尾 まいこ新潮社発売日:2007-06ブクログでレビューを見る»家族という集合体がこんなに簡単に優しくあれるものなのかどうなのか私にはよくわからないけど、主人公が子どもだから、子どもはどんな家族にいてもそれを普通として順応して生…

日本の名随筆「猫」

日本の名随筆 (3)作品社発売日:1982-01ブクログでレビューを見る»人に飼われるというより、コミュニティの中を自在にうろちょろしていた時代の猫たちの生活がわかる。「ペットと飼い主」というより「猫と人」としかいいようのないゆるやかな人との関係は、…

ひきこもりカレンダー

ひきこもりカレンダー勝山 実文春ネスコ発売日:2001-01ブクログでレビューを見る»引きこもる側が引きこもりながら引きこもることについて意見を述べるってあんまりないことなんじゃないだろうか。よくは知らないんだけど。引きこもる人はみんな後ろめたさと…

心の中にある廃墟

廃墟マニアという人たちが世の中にはいる。 人気のない廃屋や使われなくなって何年も経つ病院や学校など、出向いて行っては鑑賞したり写真を撮ったりして楽しむのだ。インターネットで探せばその手の人たちが撮った廃墟の写真がいくらでも出てくる。 私はわ…

【机猫】8.証拠

現場、押さえました!

【机猫】7.いたずら

夜の間に。

「泡」の魔力は人を狂わせる

洗顔の際に重視される「泡」の話である。 出来るだけ多くの、しっかりした泡で顔を包み込んで洗うのが大切というのは、実行しているかどうかは別としても、女性の間ではもはや常識であろう。 「あきらめないで」で有名なあの石けんも、もくもくとした泡の映…

桃色トワイライト

桃色トワイライト (新潮文庫)三浦 しをん新潮社発売日:2010-02-26ブクログでレビューを見る»この人の小説の抑制のきいた笑いは、このあふれるような言葉の渦から選び取られているのか。ちょっと勢いについていけず、置いて行かれる感があるが、相性の問題だ…

芸人交換日記〜イエローハーツの物語

芸人交換日記 〜イエローハーツの物語〜鈴木おさむ太田出版発売日:2011-03-10ブクログでレビューを見る»泣きはしなかったけど、夢を追いかけるって楽しくて辛くて厳しいことなんだなって思うと何だか切なくなった。私が見たいお笑いは、こうやって夢を諦め…

魯山人の料理王国

魯山人の料理王国北大路 魯山人文化出版局発売日:1980-02-25ブクログでレビューを見る»一つのことをある程度やり続けていると、そこにその人らしさが出てくるのは確かではあるけれど「仕事上の失敗と人格的な欠陥を一緒にしない」というのが理性的な考えの…

あたらしいあたりまえ。

あたらしいあたりまえ。松浦 弥太郎PHP研究所発売日:2010-01-16ブクログでレビューを見る»暮しの手帖つながりで「すてきなあなたに」と並行して読んでいたのでつい比べてしまうのだけど、同じ「ていねいに」でもこの人のていねいは防衛でもあるという気がし…

まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)三浦 しをん文藝春秋発売日:2009-01-09ブクログでレビューを見る»とても読みやすくて一気に読んだ。主人公の内心のツッコミが時々すごくツボにはまって笑える。この人の小説は初めて読んだけど、他の本も読んでみたい。久し…

好きだからこそ

まだ入院中なのだけど、関係ない、というか入院する前に書いた話。コーヒーが好きだ。 だから毎朝、コーヒーを入れる。 熱いうちに、保温のできるタンブラーにつめておく。 夜、まだ温かいコーヒーを流しに捨てる。 タンブラーを洗う。最初は「コーヒー飲ま…

すてきなあなたに

すてきなあなたに大橋 鎮子暮しの手帖社発売日:1994-09ブクログでレビューを見る»松浦弥太郎から暮しの手帖つながりで読んだ。子供のときに家にあってよく読んでいた暮しの手帖の世界がそのままそこにある感じ。松浦弥太郎のストイックなやり方はなかなか真…

日々の100

日々の100松浦 弥太郎青山出版社発売日:2009-03-26ブクログでレビューを見る»この人の好きなものには「白いもの」がとても多い。白いシャツ、白いハンカチ、白い風呂敷…本文中では色に触れていないが、たぶんトランクスも白だ。白いものを身の回りにおくの…

いつもの毎日。

いつもの毎日。松浦 弥太郎ベストセラーズ発売日:2010-07-21ブクログでレビューを見る»ものを買うと「ああ、ようやくこれ(例えば茶碗などの雑貨や衣類)を探す日々から解放された」と思う時がある。もの探しは楽しくもあり、果てしなく煩わしくもあるのだ…

仲良くしなければならないのだ

入院していると、生活のほとんどを支えてくれているのは看護師さんであるということをしみじみ感じる。採血や薬の管理から食事の配膳やらリネン交換やら患者の私物の管理やら、看護師さん(正確には看護師・准看護師・看護助手と職種があって、受け持つ仕事…