ひも類厳禁

私の入院している病棟では、ひも類の持ち込みが厳しく制限されている。
想像すればわかるかもしれないが、要するに自殺防止のためである。
ズボンにはベルトをすることができないし、長い浴用タオルは詰め所に預けなくてはならない。そこまではまあ、わからなくもないのだが、スウェットやパーカーのひもも抜いておかなければならないし、長めのペンダントも持ち込めない。紙袋のひもも長いものは持ち込めない。デパートの紙袋を前に
「このひも(の長さ)はどうかしらねえ」
と看護師さんが大まじめに語り合っているのを見ると、本当にこれで自殺を図れるかどうか想像しているのか疑いたくなってくる。
思わず
「首を通してみましょうか?」
と言ってみたら、苦笑いで持ち込みを許可してくれたから、本当は看護師さんだってそんなことで時間を取られたくはないのかもしれない。
この前は化粧用のコットンを
「口に詰めたりしたら困るから」
という理由で詰所預かりにされた。コットンを口に詰め込んで窒息死するガッツのある人間というのが本当に存在するのだろうか。
そんなことばかり言われるので、つい手持ちのアイテムで自殺する方法を考えたくなってしまう。首をつるなら、ズボンでもジャケットでもできそうだ。パーカーのひもよりはずっと確実に死ねそうな気がする。どこにくくりつけるかが問題だが、病室のドアノブにかけられないこともなさそうだし、ベッドの柵でもいいかもしれない。自殺する気がまったくない人間にそんなことを考えさせる規則というのが、果たして抑止力になっているのか、疑問に思う日々である。