猫たちのお気に入り

猫たちは新しい人間や新しい環境は好きではないが新しい物は好きだ。新しい箱があればとりあえず入ってみるし、新しい丸いものは必ず転がしてみる。夫が時々棒やひもを使っておもちゃを作ってやるのだが、そんなときはいつも、作っている間から
「何作ってるの?それで遊んでくれるの?ねえねえ何?」
といった顔をして目を輝かせて待ち構えている。

猫たちが特に気に入っているのが、コバケンが東京から空輸されてきたときにご好意で同梱していただいた、水引を束ねて棒をつけたほうきのような形の猫じゃらしなのだが、遊びすぎて随分傷んできた。そこで、夫が100円ショップで水引を買ってきて、似たものを作ってやることになった。いつものように猫たちのおめめはもうキラキラである。
「何作ってるの?それで遊んでくれるの?ねえねえ何?何何?あ、もしかして猫缶くれる?猫缶くれるなら遊んでくれなくてもいいや。ねえねえ猫缶ちょうだいねえねえねえ猫缶猫缶」
と途中からただの腹の減った猫になってしまったが、とにかく期待のまなざしで夫を見守っている。

いざ完成すると、これがコバケンには大当たりだったらしく、いつになく何度も何度もくわえて持ってきて、投げてくれるのを待っている。廊下の向こうに飼い主が投げたのを、走って取りに行くのが好きなのだ。

猫じゃらしを投げて欲しいとき、コバケンは猫じゃらしをとりあえず所定の位置(飼い主がいつも座っているソファの脇)に持ってきて
「何かいいこと起きないかなー」
という顔をして待っている。ヲザワも数年前同じ遊びにはまっていたことがあった(今は全くやらない)のだが、その時はかなりしっかり飼い主の顔を見て
「お前が投げてくれるんだろ、早く投げてくれよ」
と、飼い主が投げているということを理解している様子だった(調べたら一歳の時だった→こちら)ので、コバケンにもそういう意識を持ってもらいたくてこちらを見るよう促してから猫じゃらしを投げることにしているのだが、これはなかなか定着しない。猫じゃらしと飼い主というより、場所で覚えているようだ。それでも何度も何度も持ってくるので、仕方なく投げてやる。作った直後など飽きもせず30分以上付き合わされた。

時々、肝心のブツを持ってくるのを忘れて、ソファの脇に手ぶらでとことことやってきて
「何かいいこと起きないかなー」
という顔をして座っていることがあるのだが、これに応じるとわけがわからなくなりそうなので、これは無視することにしている。

ヲザワはと言えば、投げて持ってくることはしないが、飼い主が猫じゃらしを持って大きな円を描くように床を這わせると、自分のしっぽを追いかける犬のごとくぐるぐるぐると走って追いかけて回る。これはこれで面白いのだが、投げるだけのコバケンよりも手間がかかるため、あまりやってやれない。気に入ってはいるようだ。

いくらお気に入りのおもちゃとは言え、最近は少々飽きてきている。一時の熱狂は過ぎ、ひなたぼっこ用の箱に大事に入れてあることもあるのだが、たいていは床の上に放置されている。コバケンが気が向くとくわえて持ってくることがたまにある程度だ。そうするとまた夫が新しいおもちゃを作る。猫たちの目を輝かせる顔が見たいのか、単なる創作意欲なのか知らないが、よく人間も飽きないものだ。