結局何を買ったらいいのだ

夫は7月生まれだ。
私は夫の誕生日を忘れないように、しかも誕生日の前から誕生日のことをしっかり気にかけている出来た妻と思われるために、6月下旬に「誕生日のことを聞く」というアラームをセットしている。
そのアラームに従って、6月某日、プレゼントに何が欲しいか聞いてみた。

3Dプリンタが欲しいんだけどなあ」
「へえ」

3Dプリンタなんてなんだかすごそうだが手が出る値段なのだろうか。
調べてみたところ、軽く20万越えである。たぶん本気で言ったのではないのだろう。プレゼントにもらえるかどうかを抜きにして、欲しかったので言ってみただけなのであろう。
私がアラブの大富豪と重婚していれば、
「ああわかった、いいよ、何個欲しいの?置くとこないんじゃない?プリンタ用にプール付き豪邸でもついでに作る?」
と言ってあげるのだが現状ではそうもいかない。

6月某日、改めて夫に欲しい物を聞いてみた。

「iPadmini欲しいけどそれよりパソコン買い換えたいけどそれは自分で買うし家であまり使わないからいつ買うか迷ってる」
「ふうん、そっか」

パソコンを買い換えたいのはわかったのだが、プレゼントに話が及んでいない。
「ふうん」で終わらせる妻も妻である。

そんな感じで6月は終わり、7月某日、更に改めて夫に欲しい物を聞いてみた。

「革ジャンかなでも今売ってないかな服とか靴も普段買わないからでもやっぱりパソコン欲しい今の古いから画面が暗くてキーボードも(以下略)」
「ふむふむ」

「とにかくまずはパソコンね、じゃあまずそれを買いましょう、それが落ち着かないとプレゼントには頭が及ばないのね」
と言ってあげたいところなのだが、まことに残念ながら私はまだアラブの大富豪と重婚していないのだ。それでも、革ジャンと服と靴というワードが出て来ているという点では、前進はしていると言えよう。

7月某日、パソコンに向かっていた夫が

「2万円台の3Dプリンタがある」

と言いだした。
話が振り出しに戻ってしまった。
いや、戻ってしまってもそれに決まれば何の問題はないのだ。元々一番欲しいのに値段が高すぎて手が出なかった物が、手頃な値段で存在するのだから、一番良い展開ではないか。
ところが夫が言うには、

「でもこの3Dプリンタだと小さい物しか作れないみたいだから、結局自分の作りたい物は作れない気がする。俺が作りたいのは(以下略)」

気持ちはわかる。よくわかるのだが。

とっくに誕生日は過ぎてしまったし、なんかもう聞くのめんどくさくなってきたので、誰か私にアラブの大富豪を紹介してください。重婚OKの。