キス我慢選手権THE MOVIE

テレビ東京の深夜番組「ゴッドタン」の企画から生まれた映画「キス我慢選手権THE MOVIE」。男性芸人が様々な女性からキスを迫られるのをひたすら耐えるというだけの企画だったはずなのだが、劇団ひとりの見事なアドリブ芝居から、なんと全編アドリブの映画まで出来上がってしまった。

この映画、劇団ひとりのアドリブとは思えない名台詞の数々に酔いしれて涙することもできなくはないのだが、やはりこれは基本的には「笑える」映画である。はずせないのは、ストーリーの進行と並行して、ロケバスでその様子を見守るバナナマンおぎやはぎ、松丸アナの存在だ。この5人がこの不思議な映画の「正しい」見方を常に教えてくれる。
普通の映画だったら普通に見過ごしてしまう何気ない場面にも
「こんなところにもカメラスタンバイしてるんだ!」
「こんなに役者の近くで爆破やるなんて大丈夫か?」
のような(うろ覚えですすいません)コメントを入れ、張られた伏線に気づいたときや大物役者が出てくれば大騒ぎで盛り上がる。時々出てくる普通の映画ではまず見られない馬鹿馬鹿しいシーンでは、心置きなく大笑いする。
ゴッドタンという番組を心から愛するファン仲間と一緒に鑑賞しているような雰囲気で、こちらも思い切り笑うことが出来るのだ。実際劇場の空気もそんな感じで、みんなが好きなところで思う存分声を上げて笑っていたように思う。そういう、リラックスした空気を作るのがこの5人の役割なのだ。

そして物語はクライマックス、ここぞという見事な決め台詞を劇団ひとりが言うとき、映画のストーリー的には「一番の泣かせどころ」のはずなのに5人は「すっげえ!」と大爆笑するのだ。観客の方も、うるうるしながら爆笑するという不思議な経験をする。私はそんなに映画には詳しくないのだが、こんな映画、初めてだ。

あと見逃せないのは、最後の最後でこの5人のうちの1人がアドリブ芝居に参戦するところ。このかけあいが実に見事で、物語としても、この映画全体としても、完璧なエンディングを飾る一言を、劇団ひとりから引き出している。

家でのんびり楽しむのもいいけど、この映画はぜひぜひ、劇場で皆と爆笑しながら見て欲しい。今まで経験したことのない新しい笑いを、感じられるはずだから。