忘れてしまうのだ

昨夜録画しておいたテレビ番組を夫と見ていたところ「ここは見たでしょ」と夫が言う。私は全く見た覚えがないのだが、コメントもしていたと言われた。
また酒か、酒で記憶が飛んだのか。
夫の言葉を適当にはぐらかしつつ、密かに反省する。
しかし酒のせいではなく、単に忘れっぽいからという可能性もある。なにしろ楽しく読んだ本も、見た映画も、テレビ番組も、お笑いや音楽のライブも、ことごとく忘れてしまうのだ。
夫のほうが私の言った感想を覚えていて「〜って言ってたじゃん」と言ってくるのだが「ほー、そんなことを言っていたのか」と思うしかない。絶対に本放送を見たはずのテレビ番組の再放送も、全く新鮮に見ることができる。
感想がないわけではない。見終えたとき、読み終えたときは確かにいろいろなことを考えているはずだ。だがそれらはあっという間に霞がかかったように忘却の彼方に追いやられ、数日のうちに跡形もなく消え去ってしまう。
本などは読み終えたら感想を記録するようにしてはいるのだが、後で読み返しても「こんなこと考えていたのか」と他人事のように感心したりがっかりしたりするばかりであらすじもろくに思い出せない。一度読んだ本を気づかずに図書館で借りて来る(しかも気づかずに読んでしまう)こともある。これでは感想を人に言うこともできない。
忘れっぽいのが原因で昨日見たテレビのことも覚えていないのだとしたら、反省のしようもない。ただ自分に失望するのみである。酒のせいのほうがまだましな気がする。この記憶力の悪さで人生の何割かを確実に損しているのではなかろうか。まったく残念な話である。