誘惑。

夫がコストコでドライマンゴーの大袋を買ってきた。

夫が買ってきた物だから、主たる所有権は夫にある。だが私も食べることを禁止されているわけではない。だから食べる。
大袋だから、ちょっと食べたくらいでは減ったかどうかよくわからない。気が大きくなってどんどん食べる。だがドライマンゴーも無限にあるわけではない。次第に袋の中身は少なくなる。こんなに食べているのがいつばれるか、不安がつのる。
ある日夫が袋を開けて食べるが、何も言われない。ほっとする。

夫が何日もドライマンゴーを食べない時がある。その間も私はちょこちょこ食べている。気づけば中身は随分心細くなっている。ドライマンゴー欲を抑えていられる夫の自制心が恨めしい。

今がまさにそういう状態。「早く本当のことを言って楽になれよ」という脳内刑事の声がするが、わざわざ突然「私実は、ドライマンゴーを…」と白状するのもどうかと思うので、しまうときに袋の位置を変えたりして「私も食べていますよ」ということを地味にアピールしてみる。夫が気づいて「随分食べたねえ」と笑ってくれれば一件落着だ。夫は基本的に温厚な性格なので、ドライマンゴーの件で責められたり、罵られたりすることはないと思う、たぶん。

要するにコストコのドライマンゴーはとても美味しいという話。誘惑から逃れられない弱い心の妻でごめんよ、夫。早く気づいて、お願い。