桐島、部活やめるってよ

スクールカーストという言葉をこの映画の感想を読んで初めて知ったのだけど、確かに学校のクラスの中には「上位」と「下位」がはっきりと存在していて、二つはめったにふれあうと言うことがない。
物語は「上位」グループの中でもトップクラスの位置にいる「桐島」という生徒の不在から始まる。桐島がいなくなったことにより、バレー部の均衡は崩れ、友達関係、恋人関係にも微妙な変化が起こる。
映画部のふたりと吹奏楽部の部長はどちらかと言えば「下位」に属するのだろうし、帰宅部の男子3人(+桐島)とその彼女を含む女子4人グループは「上位」に属するのだろう。4人グループの一人で、男子3人の一人宏樹の彼女である沙奈という女子は、あからさまに映画部の二人をバカにしているし、宏樹のことが好きな吹奏楽部の部長の目の前で宏樹とエロいキスを交わして見せつけたりする。映画部の前田と4人グループの一人かすみが映画館で偶然出会う場面では、前田が一人で舞い上がってかすみに惚れてしまったりするのだが、かすみは実は帰宅部の男子竜汰とつきあっていて、前田とは一定の距離を保とうとする。
「上位」と「下位」が明らかなクラス内の人間関係だが、「上位」が楽しく「下位」が楽しくないわけではない。「上位」の子たちは薄っぺらな人間関係を維持するのに懸命で、どこかでそれに息苦しさを感じていたりする。かすみは竜汰と付き合っていることを他の女子に隠しているし、バドミントン部の実果は部活を続ける理由をグループの中では「内申書のため」とうそぶいて見せる。そしてそういう空虚さは、桐島の不在によって更に明らかになっていく。
対して「下位」のメンバーは桐島の不在に影響されることなく、マイペースに自分の世界を構築していく。映画部の前田は顧問が反対するゾンビ映画を撮ろうと張り切るし、吹奏楽部の部長だって、濃厚なキスを見せられた後に合奏に参加しいい表情をみせる。そんな「上位」グループと「下位」グループが学校の屋上で対峙する。桐島の不在にいらつく「上位」グループを、前田はゾンビに襲われる者としてカメラにおさめる。そんな前田の姿を宏樹はどこかまぶしく見つめる。前田にカメラを向けられた宏樹は思わず涙を見せる。それでもやっぱりスーパースターである桐島を求め、宏樹が桐島に電話してしまうラストシーンは、とても冷徹だ。