猫たちのいちにち(2)

夕方、夫が帰ってくると二匹が心待ちにしている猫缶の時間だ。玄関のドアが開く気配にはコバケンの方が敏感で、鍵の開くかちりという音より前にダッシュで出迎える。後ろからのそのそとヲザワがついて行く。自室や洗面所へと移動する夫の後をコバケンはべたべたとついて回る。私がそこまでついて回られることはまずないので、猫缶の効果とはいえ、少々夫がうらやましくなる。夫によれば、自室の椅子に座った夫の鼻をコバケンがなめるのが日課らしい。私がいると気が散るのか見せてくれたことはないのだが。
身支度を終えた夫が猫缶を開けて二つの皿に分けて盛りつける瞬間が今日のハイライト。二匹は一心に食べる。食べるスピードはヲザワのほうが速くて、食べ終わるとコバケンの皿を前足でつつーっと引き寄せて横取りすることがある。気づいたときにはやめさせているのだが、コバケンはあまり執着せず、あっさりとその場を離れてしまう。待ち望んでいたわりには淡泊なコバケンである。
猫たちが食べ終わると夫の夕食だ。猫たちは今度は夫が飲んでいる牛乳のおこぼれに預かろうと待ち構える。夕食を終えた夫に、皿に少しずつ入れてもらって満足そうになめる。しばらく猫たちは活発になって、コバケンがボールを追いかけたり、そんなコバケンをヲザワが襲撃したりする。ひとしきり遊ぶと、ソファでテレビを見ている夫の膝に二匹して収まって寝る。時には飼い主の気まぐれでブラッシングをされたり、猫じゃらしで遊んでもらえたりする。
飼い主が寝室に引き上げたあと、夜の運動会が繰り広げられているのかどうかはわからないが、うるさいと思ったことはない。案外すぐに寝静まっているのかもしれない。翌朝、寝室の前で飼い主が起きるのを待ち構える時まで、しばし猫たちとはお別れだ。