遊べない猫が遊ぶもの

お菓子の箱に結んであった50センチくらいの薄っぺらい赤いリボンに、猫1が妙に興味を示す。ひらひらする動きがいいのか、赤い色が目に入りやすいのか、薄手で爪がささりやすいのがいいのかわからないが、右に左に動かすと、目をらんらんと輝かせて飛びついてくる。
猫2のほうはボールでもなんでも出してきて勝手に遊んでいるので、特に珍しいことではないのだが、遊び下手の猫1のことだから、ついついこちらも嬉しくなる。一人遊びはもちろんのこと、猫じゃらしで遊んでやろうとしても「…」とぼんやり見つめるだけでちっとも乗ってこない「遊べない猫」なのだ。食欲の落ちた病人が唯一喜んで食べてくれるものを見つけたときの心境である。
猫に遊びが必要なのかどうか、別に遊べないなら遊ばないで生きていたっていいのかもしれないが、猫らしく遊んでくれると一人前の猫になったようで、何となく安心する。
リボンでこれだけ遊べるのなら、次はこのリボンにネズミの玩具でもくくりつけたくなるのが人情というものだが、そうすると遊ばなくなるんじゃないかという気がする。この単純なフォルムがシンプルイズベスト、単純な猫1の頭脳にはちょうどいいのだ。余計なことをしたい気持ちをぐっとこらえてリボンで猫1を釣り上げようとする日々である。