鈍い猫と鋭い猫と鈍い飼い主。

子猫のコバケンの目から涙が止まらなくなったので、家に来てはじめて動物病院につれていくことにした。
病院好きの猫はそう多くないと思うが、先住猫のヲザワは元来が鈍いというか、いつもぼんやりしていて、好物の猫缶でさえ目の前に置かれてから「えーと、これ何だっけ・・・あ、猫缶か。うーんと・・・食べるか」といった調子だから、こういうときに捕まえるのに苦労した記憶がない。そんな猫に慣らされた飼い主のほうも相当ぼんやりとしていて、前日からケージを用意しておくとか、おもちゃでだましだましバッグに誘い込むなどの工夫は考えもせず、直前になって押入からケージを出し、二匹の猫が寝ているはずの寝室へ行ってみたら、コバケンだけがいなくなっていた。
探してみるとベッドの下に隠れており、目をまん丸にして様子をうかがっている。「おお、これが噂の察するというやつか。賢いものだ」などと感心してしまったのだが、そんな悠長なことも言っていられない。ベッドの上を行ったり来たりして追いかけ回し、ようやく廊下に追い込んだころには、すっかり怯えて全身の毛を逆立てていた。
まだ子猫だから、暴れても捕まえるのにそれほどの苦労はしなかったが、今後ケージを見ただけで逃げ出すようになったら相当厄介なことになる。飼い主も心を入れ替えて猫との知恵比べをしなくてはならない。利発な猫は利発な猫で苦労があるものです。